Life

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秋という牢獄

秋はもの悲しい。夏というお祭り騒ぎが中心にあって、それが次第に小さくなり、消えていく。気が付くと、あの騒がしい季節はすでに過ぎ去っている。 騒がしさは煩わしいものだ。人間を含めたすべての動物が「自分は生きているんだ」という生々しさを嫌という...
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ゴースト

僕はゴーストじゃない。今、ここで息をしている人間だ。「それじゃ、お前はあの時、なぜ、動くことができなかったんだ?彼女、助けを求めていただろう?」もう一人の僕が言った。「うるさい! 黙れ! 僕には心の準備が必要なんだ。動くまでに、どうしても時...
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そろそろ過去を捨てて

ねえ、あなたは最後まで私に振り向いてくれなかったわね。あの日から急にあなたは冷たくなった。ねえ、どうしてなの? あら、嫌だ。傷は癒えたはずなのに、このタンポポを見ていると、思い出してしまったわ。あれからもう7年。このタンポポの種のように、あ...
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希望に満ちた朝に

今、空港バスで空港に向かっている。行きはすごくテンションが上がっているのに、帰りはいつもこうだ。日常生活という狭い世界に引き戻される感覚。特に帰りの空港バスの中では、そんな感覚がピークを迎える。これほど、日常生活から離れた所まできて、結局は...
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輝くような未来

あの情熱はどこへ行った。あのじりじりと焼け付くような灼熱の情熱だ。その場にいても立ってもいられなくなるような強烈な熱を放つ情熱だ。たしかにそんな情熱がかつてのオレの中にはあった。そして、焼けつくような焦燥感を、味わいたくもないのにさんざんオ...
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極寒の中で

極寒の中で私はさまよっている。この辺りはもし、今が1月の下旬でなかったら、静かな街だ。ところが、この時期はどうだ。一歩間違えば、凍死しそうな寒さが肌を刺す。つま先の感覚もすでになくなっている。吐く息が白く立ちのぼっていく。体温はどんどん低下...
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あなたを振り向かせたかった

ねえ、あなた。私の愛しい人。元気でやっていますか? 私にとって、あなたはいつも高嶺の花。いつもこうやってあなたの横顔を眺めてたわね。今は踏ん切りがついたけど、一時期、私はあなたを私に振り向かせようと必死だった。でも、あなたはいつも仕事、仕事...
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無邪気な青年

えっ、この席かい?ああ、この席なら空いとるよ。誰もこんなじいさんとは向かい合って座りたくねえだろうからな。 あんた、若いのに勇気があるのお。それとも、怖いもの知らずか。たぶん、後者だろうな。。あんたからは警戒心のかけらも感じられん。それが若...
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野性の世界

都会の生活はどうだい?さぞ、住み心地がいいだろうな。おれ達にとってはお前らがありがたがっている「文明」なんてものが無駄なことに思えてならねえ。コンクリートに囲まれた部屋の中でぬくぬくと育ってきたお前らはそうやってく腐っていくんだ。肉体も、そ...
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逃亡者

おれの秘密を知りたいかい?まあ、そこに座りなよ。おれは昔、六本木を仕切っていた。こんなしょぼくれたおっさんが。。と思っただろう。いや、うそじゃないんだ。 ちょっと、唐突すぎるかい?話をおもしろくするコツは、最初にインパクトのある言葉をガツン...