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ようこそ、黒猫亭へ

いらっしゃいませ!ようこそ、私共のささやかなお店へ!えっ、なんでお前がしゃべっているんだって?しかもお前は猫以前に、看板だろうって?いえいえ、看板だからってバカにしないでください。私には立派に「こころ」があるんですから。たしかに私は、動きま...
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満月の夜に

満月の夜に、私はあの人のことを思い出している。あの人と別れて、もう三年。最後は「さよなら」も言えなかったわね。二人とも、そんなことを言える状態じゃなかったし。嫌いになったわけではなかった。たぶん、あの人もそうだったと思う。ただ、少しずつ言葉...
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この手だけは、離さずに

さあ、僕の手を握って。しっかりと握るんだよ。君にとって、僕はちょっと頼りなく見えるかもしれない。いや、「かなり」見えるかもしれない。たとえば、あの遊園地の観覧車。「高いところ大丈夫?」って君に聞かれて、「余裕だよ」なんてカッコつけたくせに、...
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青春とは

「ねえ、青春ってなんだろうね?」涼子が、波打ち際で足を止めて言った。夕焼けが海に溶けて、影だけになった僕らが、ゆっくり揺れている。「俺たちが今こうしていることだよ」翔太が、当たり前みたいに答える。「これが青春だって。だって、みんな楽しいだろ...
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シマウマたちの午後会議

「A」なあ……オレたち、なんでこんなにシマシマになっちまったんだろうな。「B」はあ? いきなりなんだよ。そりゃ、仕方ねえだろ。オレたちは――シマウマなんだから。「A」そうだけどさ、悔しいじゃねえか。見てみろよ、あっちの馬。キレイな栗毛、すら...
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光の旅の物語

今、私は空にかざした一枚の葉っぱを通して、光の速度を感じようとしている。葉脈の隙間から、細く鋭く漏れてくる一筋の光。それが、私の瞳に届くまでの時間を計算してみる。光の速度は、1秒間に地球をおよそ7周半するほどの速さ。葉っぱの隙間から私の目ま...
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ずっと、好きでいてね

ママ、ねえ、ママ。私のこと、好き?ふと、手をつないで歩きながら聞いてみたくなった。風が海の匂いを運んでくる。足元では木の板がぎゅっと鳴いて、カモメが遠くで鳴いている。時々、心配になるの。だって、ママ、時々悲しい顔をして、お外をじっと見ている...
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穴倉に生きて

私はこの場所で静かに生きている。静かに生きるというのは、意外に難しい。というのは、私のその意志を邪魔しようとする輩が結構いるからだ。一番面倒くさいのが、3軒隣のタコ八の小僧だ。やつもここと同じような薄暗い場所で、ひっそりと暮らしている。ただ...
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さなぎから蝶へ

さなぎから蝶へ。私はいつも、このイメージを持って学生時代を過ごしてきた。大人になって、私は蝶になれたかしら…。さなぎは固い殻に覆われた、醜い生き物。美しい蝶になるために、今か今かとチャンスをうかがっている醜い生き物。学生時代の私は、まさにさ...
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さらば、友よ

おーい、アスラーン。あいつ、本当にアブジャに旅立ったのかなあ。アスランは昨夜から消息を絶った。おれはアスランがどこへ行ったのかを知っている。アブジャに新天地を求めて旅立ったのだ。おれにとって、それはうらやましいことだった。うらやましさは、彼...