うちのたくろー、見かけませんでしたか?
たくろーがこの3日間ほど、うちに帰ってこないの。。
あっ、たくろーはうちの猫です。
「うちの」と言っても、ご存じの通り、猫は気まぐれだから、
いつの間にか出て行って、いつの間にか返ってくる感じだったけど。。
ほんとにどこにいっちゃったのかしら。。
何か事故にでもあってなければ、いいけど。
あの子が血を流して、道路で横たわっている姿を想像しただけで。。。
気が狂っちゃいそう。。
あー、だめ。だめ。
そんな想像は頭からたたきださなきゃ。
だって、私が暗い顔をしてたら、たくろーだって帰りにくいし。。
もしかして、その辺で私の様子をうかがってたりして。
元気を出さなきゃ!
えっと、たくろーの説明をします。
たくろーは赤い首輪をしてます。
この首輪はデパートで買ったんだけど、この首輪を見てピンときちゃったの。
「この首輪はたくろーがつけなきゃ」って。
なんだか彼氏へのプレゼントを買うみたいに変な気分だったわ。
それで値段なんか気にせずに、買っちゃったの。
(結構、高かった。。)
それで家に帰って、あの子にその首輪をしてあげると、「どう?似合うでしょ」とご満悦の様子。
私もうれしくなっちゃって、まるで王子様のようなあの子をずっと見つめてた。。
そういえば、あの子は、時々、とても悩ましい眼差しをしてたなあ。
たとえば、秋の昼下がり、のんびりソファでくつろいでいると、あのつぶらな瞳で
私のことを見つめてたことがあった。
まるで「君のことは、すべてわかっているよ」と言わんばかりの眼差しで。
そんなとき、私は自分が隠したいところまで見透かされていそうで、私の意地汚いところまで
見通されてそうで「もう、見ないでよ!」ってその場を離れたわ。
心を落ち着かせようと思ってベランダに出て、ベランダからあの子をふと振り返ってみると、
とてもやさしい表情でまだ、私のことを見てた。。
「隠さなくていいんだよ。君のことはすべてわかっているから。」って言った気がした。
あの子がいとおしい。
ねえ。どこに行っちゃったの。
早く帰ってきて、私のことを見守っていてよ。
どこかここじゃない、もっといい居場所を見つけたの。。
それならそれでいい。
事故にあってるより、よっぽどいいもの。
ねえ、たくろー、またあの表情を見せてよ。
わたしはいつまでもあなたのことを待っているから。
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