Life

ダンケルク

私はこの場所にずっと立っている。君たち人間の単位でいうと…、そうだな、300年くらいか。君たちの目から見ると、ずいぶん寂しいところにつっ立っているなあと思うことだろう。昔は、この辺りもうっそうと木が茂っていて、にぎやかだった…。その頃は、私...
Life

「良心」という面倒でやっかいなもの

雪がすべてを覆いつくしている。きれいな雪景色だ。寒さが身に染みる季節が、本格的にやってきたことを実感する。雪はすべてをシンプルに見せる。すべてを白で覆いつくしてくれるからだ。複雑なもの、単純なもの。きれいなもの、汚いもの。派手なもの、陰気な...
Friend

さらば、友よ

おーい、アスラーン。あいつ、本当にアブジャに旅立ったのかなあ。アスランは昨夜から消息を絶った。おれはアスランがどこへ行ったのかを知っている。アブジャに新天地を求めて旅立ったのだ。おれにとって、それはうらやましいことだった。うらやましさは、彼...
Smile

至福の時間

仕事終わりにリビングで過ごす数時間が私の至福の時間だ。コンポでビルエバンスのピアノをかけながら、ソファに沈み込む。お気に入りのカップに少し濃いめのコーヒーを淹れて、足なんてこんな感じで思いっきり伸ばしちゃう。お店でこんなことをすると、すぐに...
Friend

翼をください

この空はどこまで続いているのだろう?僕はよく自分の背中に翼がついていたら、どんなにいいのにと思うことがある。そうすれば、ガキ大将のベンにもいじめられないで済む。だって、なぐられそうになったら、ぴょんと飛んじゃえばいいんだもの。そして、上から...
Life

美しい少女

わしは30年以上、この路面電車を走らせている。この路面電車にはわしの人生が詰まっている。雨の日も風の日も、この路面電車と一緒にこの街を駆け抜けてきた。雨の日と言えば、しずくだ。乗客が持ち込む傘から垂れるしずくで路面電車の床がびしょびしょにな...
Life

秋という牢獄

秋はもの悲しい。夏というお祭り騒ぎが中心にあって、それが次第に小さくなり、消えていく。気が付くと、あの騒がしい季節はすでに過ぎ去っている。騒がしさは煩わしいものだ。人間を含めたすべての動物が「自分は生きているんだ」という生々しさを嫌というほ...
Another World

何か新しいこと

どうやら私は、独り言をぶつぶつとつぶやいていたようだ。あまりの衝撃に周りが見えなくなっていたのだろう。「いえ、何でもありません」そう答えると、マスターは納得したようにその場を離れていった。早くひとりの時間に戻りたかったし、耳にピアスをしてい...
Life

ゴースト

僕はゴーストじゃない。今、ここで息をしている人間だ。「それじゃ、お前はあの時、なぜ、動くことができなかったんだ?彼女、助けを求めていただろう?」もう一人の僕が言った。「うるさい! 黙れ! 僕には心の準備が必要なんだ。動くまでに、どうしても時...
Life

そろそろ過去を捨てて

ねえ、あなたは最後まで私に振り向いてくれなかったわね。あの日から急にあなたは冷たくなった。ねえ、どうしてなの?あら、嫌だ。傷は癒えたはずなのに、このタンポポを見ていると、思い出してしまったわ。あれからもう7年。このタンポポの種のように、あな...