私は今、見つめている。
何をか?
愚かな人間世界を。
お前たち人間は、いつも愚かな茶番劇を演じている。
自らの境遇への憎しみ。
他人から愛されないことの悲しみ。
挙句の果てに、国と国との争いだ。
争いの理由は、いつも立派に飾られている。
正義。
信念。
歴史。
だが、夜の空から見下ろせば、
それらはどれも小さな火花に過ぎない。
怒りは一瞬で燃え上がり、
やがて自分自身を焼き尽くす。
お前たちは、なぜそこまで声を荒げるのだろう。
なぜそこまで急ぐのだろう。
私はただ、ここに止まり、
風を読み、
獲物を待つ。
沈黙の中にこそ、
世界の輪郭ははっきりと浮かび上がる。
人間は、騒がなければ存在を証明できない。
だが、静かなものほど、長く生き残る。
夜は争わない。
星も競わない。
風も主張しない。
それでも、夜は訪れ、
星は瞬き、
風は吹く。
お前たちの悲しみも、
憎しみも、
栄光も、
この大地の長い時間の中では、
ほんのわずかな揺らぎに過ぎない。
それでも私は否定しない。
愚かであることも、
足掻くことも、
叫ぶことも、
それが“生きている”という証なのだから。
私はただ、見つめている。
裁かず、
干渉せず、
ただ、見つめる。
夜の目は、いつも開いている。
そして思うのだ。
人間が愚かなのではない。
愚かであることを、
まだ受け入れられないだけなのだと。
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