rasko

Friend

ずっと、好きでいてね

ママ、ねえ、ママ。私のこと、好き?ふと、手をつないで歩きながら聞いてみたくなった。風が海の匂いを運んでくる。足元では木の板がぎゅっと鳴いて、カモメが遠くで鳴いている。時々、心配になるの。だって、ママ、時々悲しい顔をして、お外をじっと見ている...
Life

砂の世界で生きる

私はこの砂の世界で生きている。見渡す限り、砂。空を見上げれば、果てしない空。それ以外に何もない。あるいは、何も要らない——と思えるほど、この世界は単純だ。砂は風に吹かれ、時に丘を作り、時に跡形もなく崩れる。昨日あったはずの景色が、今日にはも...
Smile

呼んだ?

「……僕のこと、呼んだ?」ぴょこっ、と顔を出したのは、森のど真ん中。木と木の間にすっぽりはまり込むように顔を出してみる。僕の名前はコモチ。「……あれっ? 誰もいないなあ……」周囲を見回すけど、ただただ静か。葉っぱがこすれる音と、自分の鼓動だ...
Life

やばい、降りられない

やばいなあ……。さっきまで、「俺って、やっぱり自然が似合う男!」なんて調子に乗ってたのに、今はその自然に全力で裏切られている。ことの発端は、そう、3時間前のこと。たまたま見つけたこの岩に、なんとなく「のぼってみたら映えるかも」なんて軽いノリ...
Life

雨の底

「今日は、よく雨が降るわねえ。」ぽつりと、誰に言うでもなくつぶやいた。けれどこの雨は、もう「よく降る」どころの話じゃない。私の足元にあったはずの地面は、とうに見えなくなっていた。水は膝を越え、腰にまで届いている。いや、それ以上かもしれない。...
Life

旅の終わり

港が見え始めた。青黒い海の向こうに、岸沿いのかすかな灯りがちらちらと明滅している。その光は、まるで長い航海を終えた者たちを優しく迎えるようで、男にとってはどこかロマンティックに感じられた。「もうすぐだね」と、男は目を細めて言った。船の甲板に...
Life

結婚しよう

男さあ、結婚しよう。今すぐしよう。女そんなこと言ったって。まだ、心の準備が…。男何だよ?そんなもの俺たちに必要か?愛があれば十分だろう?女愛だけではだめなのよ。私に毎年、誕生日の贈り物してくれる?旅行に連れて行ってくれる?贅沢は言わないけど...
Life

雪原の足跡

オレは極寒の地を歩いている。ほら、見てくれよ。このきれいな足跡を。今は夏だから、吹雪もこないだろうから、しばらくはこれらの足跡もそのまま残っているだろうなあ。このまま消えてほしくないなあ。って、そうじゃないだろう。早く消えてくれなきゃ、困る...
Life

新聞紙の向こう側

私は紙の新聞が好きだ。インクの少し苦みのある香りと大きな紙面は、父を思い出させる。子供のころ、いつも朝の食卓で、大きな紙面越しにのぞく父の真剣なまなざしは、私にとって、あこがれだった。大人の世界を、一瞬でも感じることができたからだ。冷たくて...
Friend

穴倉に生きて

私はこの場所で静かに生きている。静かに生きるというのは、意外に難しい。というのは、私のその意志を邪魔しようとする輩が結構いるからだ。一番面倒くさいのが、3軒隣のタコ八の小僧だ。やつもここと同じような薄暗い場所で、ひっそりと暮らしている。ただ...