広い海と、狭い人生

Life

「海は広いな、おおきーな」か。

なぜ、こんな広くて大きい海で、こんなせせこましい場所に入ってくるんだって?
俺たちは、何を隠そう──
この辺に隠されたと噂されているバイキングの宝物を探しにきたのさ。
人生の一発逆転を狙いに来たってわけだ。

思えば、俺の人生、いいことなんて一つもなかった。

給料は上がらない。
宝くじは当たらない。
健康診断の結果だけは、なぜか毎年当たる。

だから思ったんだ。
どうせ酸素ボンベを背負うなら、夢も一緒に背負ってやろうじゃないかと。

しかしだ。
いざ洞窟の奥に進んでみると、宝箱どころか、あるのは岩と砂と、そして静寂。
時々、相棒のフィンが俺の顔面をはたく。

「おい、宝はどこだ」

と目で訴えてくるが、こっちが聞きたい。

そして、ふと気づく。
俺たちは“広い海”を探していたのではなく、
“狭い人生”から逃げようとしていただけなんじゃないか、と。

気がつけば、こんな暗くて狭い場所に潜り込んでいた。
いわば、まさかの逆転劇だ。

そのときだ。
岩陰に、なにやら光るものが見えた。

「ついに見つけたか!」

胸が高鳴る。
近づく。
さらに近づく。

そして掴んだそれは──

……空き缶だった。

どうやら俺たちの前にも、
一発逆転を狙った誰かがいたらしい。

俺たちはため息をつき、海面へ向かって浮上した。

海は、やっぱり広い。

そして思った。
人生も、案外、広いのかもしれない。
ただ、潜る場所を間違えると、ちょっと息が苦しいだけで。

さて、次はどこに潜ろうか。

宝は、案外、地上に落ちているかもしれない。
俺は今、心からそう願う。

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